現代社会の急速な変化に伴い、日本の教育も大きな転換期を迎えています。
これからの幼児教育では、子どもと大人が共に保育を築いていくことが求められています。子ども一人ひとりが幼稚園の一員として活躍し、子どもの声が保育を作っていくピースとなり、そして社会全体に良い影響を与えるための意欲やスキルを、幼児期を過ごす中で身につけていくことに繋がります。
「VUCA(ブーカ)時代」という言葉をご存知でしょうか。VUCAは、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性の4つの英単語の頭文字から成るビジネス用語になりますが、最近では教育の領域でも使用されるようになりました。簡潔に言えば「予測が困難な激動の時代」、子どもたちはそんな不安定な時代を生きることになります。最近では、新型コロナウイルスの感染拡大やそれに伴う経済活動のストップ、その他にも、AIの急速な発展、従来安定していた職業や企業の存続の問題、一方で新たな職業が生まれることも確実視されています。このような時代の背景を受け、OECDが発表した『ラーニングコンパス・学びの羅針盤2030』では、子どもたちに求められる力や新たな教育の価値観についてのヒントがありました。より良い未来を築くためには、ウェルビーイング(心身ともに健康で充足した状態)やエージェンシー(行動主体性)が重要だとされており、個々が欲求を満たし幸福を得るだけでなく、社会全体の幸福を考える事や、より良い社会を築くための変革を起こす能力を養うことが教育に求められています。
従来の教育は大人主導であり、教育活動の内容は大人が決定してきました。これまでの子どもは他者の決定に身を委ねることが多かったのですが、これからの子どもは自らが意思決定をして主体的に行動していくことが重視されるようになります。時代の変化に伴い新たな教育の価値観が生まれたことで、子どもを取り巻く大人の価値観や子育ても変化が必要な部分もあると言えます。大人は過去の成功体験に基づいて物事を考え発言をしたり行動したりしがちですが、よかれと思って行ったことも、実は子どもの成長を妨げる可能性があることには気をつけなくてはいけません。家庭も幼児教育の重要な場になりますので知識をバージョンアップすることは不可欠になってきそうです。
最後になりますが、子どもの主体性は、親や仲間、保育者など、周囲の関係性の中で育まれるものです。子どもが一人の人として受け入れられること、大人は否定せずに一旦受け止め気持ちを尊重していくことが、子どもの自信に繋がります。そのためには、園だけでなく、ご家庭と協力し合いながら子どもたちが成長できる環境を共に作り上げていきたいです。